LEDとサーカディアンリズム ①

 

空が青く見えるのは、なぜか知っていますか? 

私達が目で見ることができる可視光線の波長は380~780nmで、波長の長い方が赤、短い方が紫です。

 

そして虹に現れるよう赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色の波長が含まれています。波長は、短ければ短い程、光のエネルギーは強くなります。

 

(紫や青側の方が強い)この青色光(380~495nm)は、短い波長のため、大気中の水蒸気やチリなどの粒子にぶつかった時に跳ね返りやすく、四方八方に散乱して空いっぱいに広がっていくため、空は青く見えるのです。海の色が青いのも同じ理由です。

 

又、夕焼けが赤いのは、太陽が沈んで斜めの角度から射すようになると大気層を通過する距離が長くなり、青い色はすっかり散乱し、残った赤色だけが目立つようになるからです。

 

この波長の短い青色光がブルーライトです。昨今、ブルーライトを多く含むLEDが照明やパソコン・スマートフォン・テレビの液晶、車のライト、信号機など日常生活のいたるところで使われています。

 

特に最近、夜間の車のヘッドライトの光は、目を開けていられないほどのまぶしさです。

 

このブルーライトは、目の網膜に活性酸素を発生させ、社会的失明とも呼ばれる「加齢黄斑変性」を起こす要因にもなっています。又、それ以外にも色々な作用を及ぼしています。 


LEDとサーカディアンリズム ②

 

地球上に生命が誕生したのが約38億年前、太陽の光はそれよりさらに8億年前、地球が誕生した46億年前からずっと地球上に降り注がれてきました。

 

氷河期や隕石の衝突などどんなに地球環境が変わっても決して変わらなかったもの・・・・・それは、地球の自転による「光の明暗によるリズム」です。

 

火山が爆発しようと巨大な隕石が落ちてこようと、太陽だけは朝が来れば必ず昇り、一日の半分は光エネルギーを注いでくれました。

 

そこで、地球に生きる生物は太陽の光を最大限に活かして生き延びる為、太陽が昇っては沈む、一日ほぼ24時間の周期に合わせて時を刻む「体内時計」を身につけたのです。

 

体内時計を持つ生物だけが厳しい時代を生き延びることができ、体内時計を持てなかった生物は環境の変化についていけず、淘汰されていきました。

 

実際に生物の種類によって若干の差はあるものの、植物も昆虫も鳥や魚、私達人類も含めた哺乳類もすべて、ほぼ1日24時間周期の体内リズム=サーカディアンリズムを刻む「体内時計」持っていることが解っています。

 

その体内時計は、人間の場合、目の奥の視床下部にある「視交叉上核」という所に存在しています。

 

そして、目の網膜が、朝の「強く明るい光」をキャッチするとその信号が視交叉上核に伝わり、覚醒と睡眠のリズムをはじめとする規則正しい体内リズム即ちサーカディアンリズムを刻んでいくのです。

 

この「強く明るい光」こそ、太陽の光に含まれる「ブルーライト」です。

 

しかし、現代ではLED照明やパソコン、スマホの液晶画面の普及で「朝のように明るい光のシグナル」を「夜」も浴びるという生命誕生38億年史上初の環境を作っていることが、私達の健康にとって、大問題なのです!!!!!!


LEDとサーカディアンリズム ③

体内時計が作り出す体の一日の体内リズム(サーカディアンリズム=概日リズム)には、実感できるもの(覚醒と睡眠など)と実感としては分からないもの(体温・血圧・代謝・消化・免疫など)に分かれます。

 

例えば、体温は実際は早朝に低く、夕方に高いという体内リズムがあり、最大で約1℃近く差があることはあまり知られていません。

 

つまり、細胞が活動する時間帯には体温を高め、休むべき時間にはクールダウンしているのです。

 

この体内リズムと生活リズム(起床・摂食・排泄・入浴・運動・学習・労働・社会的行動・就寝など)が調和していると、概ね快適に生活することができます。

 

例えばメラトニンは、目の網膜から入ってくる光の量によって分泌量が変化する睡眠にかかわるホルモンで、朝の明るい光を浴びると分泌が抑えられ、太陽が沈む夕方から夜にかけて活発に分泌され、自然な眠りに導いてくれます。

 

ところが、夜にブルーライトのような明るい光を浴びてしまうと、体が「朝だ」「まだ昼間だ」と勘違いして、メラトニンの分泌量が抑えられてしまい、眠れなくなってしまうのです。

 

ある実験では、就寝前に60分間スマホやタブレット端末でネットやゲームを行った場合、日光を60分間浴びたのと同じようにメラトニンの分泌が抑えられました。それは、まるでエスプレッソコーヒー2杯分飲んだと同じ覚醒作用があるそうです。

 

それだけでなく、このメラトニンの分泌不足は、肥満、高血圧、糖尿病、がんやうつ状態を引き起こしてしまうのです。

 

参考資料 東北大学青色光で昆虫が死ぬhttp://www.tohoku.ac.jp/japanese/2014/12/press20141209-02.html


LEDとサーカディアンリズム ➃

 

これまでLEDの光(ブルーライト)を浴びることで、加齢黄斑変性になったり、体内リズム(サーカディアンリズム)を乱し、メラトニンの分泌を変化させ、睡眠に障害を起こすことを話してきました。

 

遥か昔、人間は朝日が昇ると共に起き、活動し、日が沈むと真っ暗な中で寝るという自然のリズムに沿った生き方でしっかり体内リズムを刻んできました。

 

しかし、現代では夜中でも照明を点け、明るい光を浴び、更に夜遅くまで起きているという生活リズムは、体内時計を夜型にずらして、サーカディアンリズムを乱している状態になっています。

 

このサーカディアンリズムの乱れが糖尿病の原因になることを示す実験結果があります。

 

健康な被験者を集めて、睡眠時間を短くすると同時に生活リズムを意図的に乱すという条件下で生活した場合、多くの被験者は、約3週間でインスリンの分泌能が低下してグルコースの濃度調節能力が下がることが、明確に示されたそうです。

 

又、インスリンの血糖値コントロール能には一日のリズムがあって、通常食事を摂る昼間はインスリンの効きが良いのですが、夜間はインスリンの働きが悪くなるようになっているので、夜間に多量の食物を摂った場合、食後の血糖値がなかなか下がらないのです。

 

そして、血糖値が下がらないと、インスリンを分泌する膵臓の細胞が働きすぎて疲弊することになります。

 

もちろん肥満にもなりやすいので、インスリンの機能の低下を招き、ダブルで糖尿病のリスクが高まることになります。

 

昔から言う「早寝早起き」、夜遅く食べない、睡眠時間をしっかり取る、朝の日の光を浴びる、ブルーライトを浴びないことが重要です!


LEDとサーカディアンリズム ⑤

 

LEDの光(ブルーライト)を、一日中そして夜遅くまで浴びていることで起こるサーカディアンリズムの乱れは、糖尿病や肥満以外に、血圧にも影響を及ぼしています。夜勤の多い人は、高血圧の罹患率が高いという疫学研究はよく知られています。

 

夜間に高血圧だったある人は、就寝前の数時間、パソコンやスマホを見るのをやめただけで正常値になったそうです。

 

又、職種にかかわらず夜間勤務は、女性の乳がんのリスクを30%高めると言われています。

 

男性では、前立腺がん、肺がん、すい臓がん、結腸、直腸がん、膀胱がんなどの発症リスクが高まることも確認されています。

 

さらに、「メラトニンの分泌量がピークになる深夜1~2時におきている人」「明るい室内で眠っている人」は、夜間勤務の経験にかかわらず、がんのリスクが高まることが解っています。

 

ゲームやメールで夜遅くまでおきているせいで、がんのリスクを高めるなんて、もったいない事ですね!せめて深夜0時くらいまでには、真っ暗な部屋で眠るようにしましょう!それだけでも、がんの予防につながります。

 

朝は、しっかりブルーライト(太陽の光)を浴び、そして朝食を摂ることが、サーカディアンリズムを整えることになります。そして、夜はできるだけ人工のブルーライト(LED照明・パソコン・スマホなど)を浴びないことです。

 

特に子供や若い人ほど、水晶体が澄んでいるのでブルーライトを透過しやすく影響を受けやすいので、できるだけ光源から離れることが防御になります。

 

又、ブルーライトをカットする眼鏡やルテインを利用するのもよいでしょう。

 

気を付けたいのは、白内障の手術をした人は、それまでとは逆にブルーライトがダイレクトに網膜に届く様になるので、「加齢黄斑変性」になる危険性が大きくなり、注意が必要です。